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Title : 「TIN PAN ALLEY」毛皮のマリーズ(written by romance)
Date : 2011.01.28 Friday / Category : -
絵本が好きだ。色や形の中に、短くてストレイトな文字を通して自分自身もとけ込んでゆく雰囲気が、子どもながらに好きだったし、今も好きだ。
「絵本」なんて言葉が、今回の毛皮のマリーズにはピッタリくる。
子どもが「ママ、買ってよ!」という絵本は、まずアイキャッチである。音楽の場合、イヤーキャッチかもしれない。今作「ティン・パン・アレイ」は、正しくイヤーキャッチであり、アイキャッチでもあるのだ。
私は再生ボタンを押して、全曲とも最初の5秒で涙が溢れた。そういう作品だ。そして歌詞も同じく、絵本のようにストレイトで私がいる場所が歌詞カードの文字の上であるかのようにとけ込んでしまう...。
「東京」のためであり、全人類のための讃歌だ。言葉が息をしている。冬の空に、白い吐息が踊っている。
詳しい曲説明をするより、雰囲気や、手にとった第一印象というものを感じていただきたい作品だ(音楽ライティングでこんなこと書いてよいのかしら...)
雰囲気。そうね、例えば冬の並木道を、お気に入りのスカートが翻らないようにゆっくりと走る時。夜中のバスに揺られて、静かなネオンの存在感に気づく時。恋人とコーヒーショップに行く時。
そういう時に、とてもよく似合う。きっと涙が出てしまうに違いない。
私は、音楽で、そしてその歌詞で、こんなにも泣いたことがない。悲しいとも幸せとも、どちらとも言えないような涙が「東京」という見えないものの所まで中央線のレールを伝ってゆく。本当に素晴らしい。音楽というのでは勿体無いほどに素晴らしいアルバムだ。一つの芸術のジャンルにしてしまいたいほどにアメイジングで類を見ない。けれどストレイトで、あくまで「絵本的」。とにかく手にとって、感じていただきたい。
(romance)