随分久し振りにセバスチャン・バックの映像を見た。二年前に発売されたアルバム「ANGEL DOWN」からシングルカットされた「LOVE IS A BITCH」のプロモーションビデオだから、最近の映像と言っても良いだろう。そのビデオを見る限り、デビュー当時とそれ程体形も変わらず、相変わらずのかっこ良さで嬉しくなった。昔好きだったロック・スターが、どう見てもおデブでさえない普通のおじさんになっていたりすると結構辛いものがあるから。私とセバスチャン・バックとの出会いは、彼がSKID ROWのリード・シンガーとしてデビューした時だから、今からちょうど二十年前に遡る。
バンド自体の楽曲の良さと、フロントマンであったセバスチャンのレンジの広い抜群の歌唱力に加え、長身、美形、スリムと三拍子揃っていたものだから、たちまち人気に火がつき、アメリカ本国ではデビューしてわずか二ヶ月でゴールドディスク獲得、日本公演も一年も経たないうちに実現してしまった程であった。デビュー以来、順風満帆だった彼だが、1996年にバンドを一方的に解雇されてしまう。なんでもKISSの前座をやりたがったセバスチャンと、あまり気乗りのしなかった他のメンバーとの間で舌戦が繰り広げられたのが原因とかいう噂だけれど。
その後の彼はロック・シンガーの領域だけにとどまらず、テレビドラマ、近年ではブロードウェイミュージカル「ジーザス・クライス・スーパースター」の主役を演じる等、その活躍の場を広げてゆく事となる。SKID ROWのデビュー・アルバムからシングルカットされた珠玉のパワーバラード「I REMEMBER YOU」のプロモーションビデオで、当時二十歳のセバスチャンが、喉が潰れてしまうのではないかと思う程、絶叫するようにドラマティックに歌い上げている姿は、ちょっとした感動ものである。まるでその後の彼の俳優としてのキャリアを予期させるようなビデオだ。
アルバム「SKD ROW」は、レイチェル・ボランとデイブ・セイボの強力なソングライティングコンビの曲に、セバスチャン・バッグが息を吹き込み見事に生命を与えた名盤である。特に「YOUTH GONE WILD」は、ハードロック史上に残る、ロックアンセムという感じで、十代、二十代の若い世代の人たちにもぜひ聴いてもらいたい一曲だ。今年四十一歳になり、いよいよ円熟期を迎えた彼が歌う「I REMEMBER YOU」を私は改めて聴いてみたい。バンドからの追放、父親の死、人生の様々な試練を乗り越えて来た彼の歌うこの曲は、きっと胸に染み入るはずだから。
(written by saika)